──18日目。
本当にそうなのか?自信がない。
もっと長くいる気もする。
『この世界で自分は死んだ』そんな記憶がある。
それも一度だけじゃない。何度も。…何度も。
ただその事実はない。
俺はこうして生きている。
『頭がおかしくなった』と言われればそれまでかもしれない。
でもこれは…そうじゃない。経験上……死後の世界でも、俺の幻覚でもない。現実だ。
***
だから、怖かった。
現実だから。
今まで見たことのない皮膚の色の襲撃者。
安定しない足場…逃げ場の少ない空間。
『また、玲を失うのは嫌だ。』
心の底からそう思った。
でも同時に…それは…妙な話でもあった。
そういう思考をするのも嫌だ─────けど。
少なくともこの、俺が経験してきた世界では玲は俺より先に死んでいない。
いや、この世界だけじゃない。
いつも俺が間違えて、玲が助けてくれてたんだ。
なら、あの感覚は?
どうして2度目以降だと思ったんだ?
玲が先にいなくなることで生まれる孤独を”知っている”。
記憶があるわけじゃない、想像したわけでもない。
知っている。
心当たりがないわけじゃない。
でもそれは今のこの俺の話じゃない…はずだ。
そいつについて深く詳しい話を聞いたわけでもない。
───あぁ、くそ。
自分の玲を守れなかったのに、俺の玲に助けてもらったような…そんな奴なんだぞ。
こんなことで…あの情けないやつが、自分自身だって改めて思うことになるなんて。
***
上手く言葉に出来ない苛立ちに頭を掻きながら、荷物を整理する玲に視線を送る。
こんな世界でも、目が合えば笑ってくれる。
手際よく物資を整理し、戦うための道具や食料、水を手際よく用意していく。
そうだ……手際がいい。
俺は『先に死んだ記憶がある』だけだ。
世界が繰り返されていても自分の感覚的には『死ぬ』→『目が覚める』→『玲を探して合流する』これだけだ。
手際がいいのは玲も繰り返してるからで…同じように繰り返しているのなら俺が死んだあとに玲も死んでいることになる。
問題はタイミングだ。
『玲に危害が加わってないならそれでいい』…そう思ったこともあった。
でもこんな世界で1人で生きるのは…そもそも誰であろうと難しい。
それに…これは自意識過剰…かもしれないけど。
玲はいつも俺と一緒にいるために頑張ってくれてる……………気がする。
………いや、どうだろう…やっぱ自意識過剰…か……?
…そこはいい。
芯のある強い子なのは事実だけど、……たぶん、そう頑張ってるだけでむしろ臆病に見える部分も多い。
どのみち誰かがいないと、きっと……玲は恐怖で動けなくなる。
…もしくは世界の仕組みに気付いて…俺を追いかけてくれるために自分で命を……。……。
まぁ…これは想像だから……。実際はどうかまではわからない。
でも確かなのは「自分の死」によって玲が前の世界で無事だったとしても何も守れてない。
それどころか…もうこれは俺からの玲への加害行為でしかない。
***
今さらになって自分の行動の愚かさを理解して、大きなため息をつく。
それにより驚いた玲がまず襲撃者を警戒したあと…俺の方にパタパタと近づいてくる。
「お腹空いた?空いてる?空いてるよね?ほら、トウモロコシパン!あとお茶!あとこれは明日のお弁当で…」
玲自身が食べてるのか心配になるような量の食料をこっちの口やらポケットやらに詰め込む。
物理的に返事を封じられているので精一杯のジェスチャーと表情で感謝を伝えると彼女は満面の笑みでこっちにピースをしたあとにまた荷物の整理兼、明日の仕事の準備を始めた。
実際、空腹が思考に影響していたのかもしれない。
食事を終えたあとにこれからについて簡単な答えが出る。
起きたことは変えられない。
だから今の玲の笑顔を守るために、死なない、死なせない。それだけだ。
考えることなんてそれだけでいい。
今日も生き延びよう。
『脱出できなければ死んでも世界がリセットされるだけ』
『カレンダーが2034年だったり未来の世界っぽいことと差分が大人っぽいのがひとつあるので魂混線してそう』
『今までは特に意識してなかったけど玲ちゃんが死にかけたことで存在しない記憶流れ込んでそう』
『結果自分の死=誰の救済でもなく加害でしかないということに気付けそう』
これです。(どれ)
書いた日:2023.11.13